本誌では収録できなかったものや、ホームページ上だけで楽しめる限定コンテンツ。
本誌では収録できなかったものや、ホームページ上だけで楽しめる限定コンテンツ。
価格3万円の高額ボードゲームとして巷を賑わせているクトゥルフウォーズ【脚注①】。
精巧なフィギュアが目玉の一つなのだが、なんと著名プロモデラーMAX渡辺氏が塗装した逸品があるという。
東京永代橋にあるボードゲームカフェ『Ein PROSiT!!』。
渡辺氏がオーナーとして2017年5月にオープンしたこのお店にお邪魔してお話を聞かせてもらった。
Ein PROSiT!!(アインプロージット)
郵便番号104-0033 東京都中央区新川1-20-6 4F|TEL:03-5542-0257
金:17:00〜23:00(LO 21:30)|土日:11:00〜19:00(LO 17:30)|定休日:毎週月〜木曜日
http://shop.einprosit.tokyo/
Q.「クトゥルフウォーズ」のフィギュアを、塗装するきっかけや経緯を教えてください。
渡辺 高額な商品にも関わらず大好評で品薄が続いていると聞いて。興味が湧いて見せてもらったらとにかく箱がデカくて重い(笑)しかもコマの造型も超気合い入っていて、ボリュームも凄い。このゲーム、ミニチュアが人気の要因の1つなんだなぁと。で、成形色が原色バリバリで目が痛い(笑)黄色は黄色で赤は赤!って。ゲームのコマとしての機能は万全なのだけれど、クトルゥフの世界観、イラストから思い描くイメージとこのキッチュな色使いは真逆というか、もったいないなぁと感じたんです。そこでアークライトの福本シャチョー【脚注②】に「こういったゲームのコマがいい感じで塗られていたらゲーマーさん的には嬉しいんですか?」と伺ってみたんです。そうしたら「みんな喜ぶ、絶対盛り上がります」って。だから「だったら試しに塗ってみましょう」と軽い気持ちで引き受けたんです。作業に入ったら数が多くてボリュームも凄くて正直大汗かきましたが(笑)
── 割と気軽に始められたのですね。
渡辺 はい、優れた造型の模型を塗るのは大好きなので、アシスタントさんと一緒に良いテンポでバンバン塗っていきました【脚注③】。塗っているうちに面白くなって、エスカレートして……(フィギュアを鷲掴む)
── え!? そんな風に触っていいんですか?
渡辺 はい、触って欲しいですからね。その方がやっぱり盛り上がるわけでしょ?コレ、シタデルカラー【脚注④】っていう今話題の水性塗料なんですけど、塗膜がとても強いんです。
店長 実際触ると、皆さん喜ばれますね。
渡辺 ね、ということなんですよ。実際にプレイして欲しいなって。お店のウリにもなるしね♪
── ということは、飾り用ではなく、クトゥルフウォーズもこのフィギュアで遊べちゃう!?
渡辺 はい。塗れば塗るほど楽しくなってしまい、このまま置いて飾るだけってのも寂しいねって。それで木の台座を付けてみたら、これがまた高級感も出て凄くイイじゃん!って。全部のコマに木の台座を付けて、さらにベースの裏にフェルトまで張ってしまいました。完全に悪ノリですね(笑)
── ぜひそれで遊んでみたいですね。2セット目は色調も変える予定ですか?
Q.今回の制作にあたって、特にこだわられた点やご苦労された点などがあれば、教えてください。
渡辺 コマの色は赤・黄色・青・緑、イメージカラーが決まっていたので色の組み立てはスンナリと進みました。こだわった点で言えば、同じカタチのコマを同じモノに見せたくないなと。青と言っても、赤っぽい青とか、黄色っぽい青っていう感じで。
Q.では全て傑作かと思われますが、あえてこの一体を選ぶとしたらどのフィギュアになりますか?
渡辺 (ハスターをドンっと置いて)間違いなくこいつですね。押し出しがめちゃくちゃ強い。デカい顔で、塗っていてもスゲー面白かったです。あと(ニャルラトホテプを手にして)この得体の知れないデザインも含めてこいつも好きです。
Q.元々クトゥルフ自体はご存じだったのでしょうか?
渡辺 はい。本当に得体のしれない存在とデザインでしょ? クトゥルフはこれが決定版だという正しいものはないところも好きですね。僕は立体物の世界の人なので、キャラクターによって「ある意味これはいいな。これは違うな。これは好き」と。そういう意味でこの駒たちは非常にバランスがいい。シッカリと具体的な形をしていて、とても適度だなと思っています。
Q.MAX渡辺さんに影響を受けて、自分も塗装に挑戦したいという方にアドバイスがあれば。
渡辺 まず塗料なんですけど、家に塗装環境がないのであれば、いま超注目のシタデルカラーというのがあります。一本一本がちょっと単価は張るのだけれど、非常に使い勝手がよく無駄が出ない。スペックが抜群で伸びがいいうえに乾きが早く、乾いてしまえば、こうやっても(フィギュアをこする)剥がれない凄い強靭な塗膜となる。イギリス製なんですけど、最終的には凄くリーズナブルな塗料なのでお勧めです。
── どこでも手に入るものなのでしょうか?
渡辺 ゲーマーズワークショップっていうウォーハンマーのメーカーさんが取り扱っています。シタデルカラーみたいな優秀なシステムがあるからこそ、あの会社はああいう様々な駒が出せるって言ってしまえるぐらいのモノです。
── 塗り方などの面でアドバイスなどはありますか?
渡辺 塗り方について、たっぷり塗料をつけないことが凄く大事ですね。こういうものを塗るのに慣れてない人は、昔の図画工作で絵を描くような感覚で筆に絵の具を付けてしまうヒトが多いんです。あれだと付け過ぎでボテッとしてしまうので、少ない塗料をつけてこするように塗っていく。かすれて塗れないぐらいの塗料の含み具合、絵の具を筆の先がちょっと湿っていて塗れるかな?ぐらいの少しじれったい状態がちょうどいい。クトゥルフウォーズのフィギュアは、ディティールが深くはっきりしているので、濃く深いところに濃い塗料が入り、上に明るい塗料を何層か重ねていくのが良いと思っています。
── このようにシワになっているところも……
渡辺 そうです、書き込んでいるのではなく、濃い色が下にあって明るい色をこすってカスらせている。そうすると表面の彫刻が浮き上がってくる。そういう技法ですね。総じてこのブラシワークで塗っています。
── ブラシなどの道具は特別なものなのでしょうか?
渡辺 全く特別なものではないです。普通に画材屋さんに売っているものでいいし、すっごい安いものでも全然構わないです。実は筆って物凄い消耗品なので、本当にすぐダメになっちゃうので。
── なるほど、あんまりこだわっていると散財しちゃうわけですね
渡辺 書道ってすごい高い筆とかあるじゃないですか。あればずっと使うものなんですよ。相手も紙だし、すごく優しく使うイメージですね。一方、キャンパスにガッと重ねて描いていく油彩であるとか、こういう立体を塗るときは、筆はひどい扱いをしてしまうので、高い筆を買う必要ないです。
Q. 次に『Ein PROSiT!!』のことをお伺いしたいんですけど、お店を始められたきっかけや経緯などがあれば教えてください。
渡辺 僕がボードゲームやミニチュアゲームに興味を持ったのも、アークライトの福本シャチョーさんとの交流が深くなったのと同時だったんですね。実は当初、この場所を何に使うかを決めあぐねて悩んでいたんです。そんな時福本さんと「ボードゲームファンの人たちって、紳士的で理知的。ゲームマーケットを見てもお客さんがとても穏やかですね」なんて話をしていて。「どんな場所でどんな人たちと遊ぶかをとても大事にする人たちですよ」と仰るものですから、ならばココをお店にするのはどうだろうと。相談したら、「それはナイス、全面協力するよ」と。
Q.なかなかの運命ですねぇ。ではボードゲームカフェとしての特徴など教えてください。
渡辺 どこでもいいんじゃなく、このロケーションを気に入ってくれる、「ここがいい」と思ってくれるヒトが集うお店にしたいですね。
── それにしても、本当にこの景色の良さは、凄いですね!【脚注⑤】
渡辺 ね、なかなか凄いでしょ(笑)僕自身この景観に惚れてしまったので。
── 飲食は、基本的には下の階【脚注⑥】で食べた方が良いのでしょうか?
渡辺 ゲームをしながら食べられる軽食メニューを用意してお出ししています。また、1階が醸造所になっていて、ここで醸したオリジナルビールが飲めます。ミード(蜂蜜酒)ってご存知ですか?
── それはもう、クトゥルフファンにとっては馴染みのあるお酒ですね(笑)
渡辺 そのミードも醸しております♪しかも朱鷺田先生プロデュースの黄金のミード【脚注⑦】を♪今、熟成の寝かせに入っておりまして、2018年1月くらいから皆さんにご提供できます♪
── 贅沢ですね! ここでしか飲めないクトゥルフ由来の黄金の蜂蜜酒が飲めると!
渡辺 黄金のミードを舐めながら、クトゥルフウォーズをプレイする。コレって最高じゃないですか♪
Q.最後になりますが、お話しできる範囲で今後の展望や企画があれば、教えてください。
渡辺 アークライトさんとホビージャパンさんに全面協力を頂いて、新しいゲームがリリースされる度にここで試遊会、インストラクター付のお披露目発表会をする企画が進行中です。またこれから毎週末、金土日はイベントを開催していく予定です。今のところ、まだまだお客さんの認知度が低い状況ですので、この場所を多くの人に知ってもらいたいですね♪
── 貸し切り等は出来たりするのでしょうか?
渡辺 もちろん出来ます。時間貸しという形でこの部屋を使いたいというのはもちろんありなので、相談して頂ければと思います。
── その他、何かありますか?
渡辺 飯田橋のゲームバーグリュックさんにお許しいただき、オリジナルコインを用いた料金システムを導入しました【脚注⑧】。コスチュームを着てプレイしてくれる人たち、LARPされている方にもご利用いただけたらなぁと。より深く濃密な時間を過ごして楽しんでもらえたらと願っています。
── 是非今後も取材させてください。本日はありがとうございました。
渡辺 ありがとうございました。
塗装されたフィギュアが本当に素晴らしく、シタデルカラーで何か塗装に挑戦したくなってしまいました。もう1つのバージョンのフィギュアも完成したら絶対見たいですね。『Ein PROSiT!!』の店内の景色はもちろん、全面窓のおかげで開放感が素晴らしいお店です。オリジナルの黄金のミードも楽しみなので、邪教徒の格好をしてクトゥルフウォーズを遊ぶという企画をぜひやりたいと心に誓いました。
プロモデラーの第一人者。ガンプラやフィギュアなどの塗装の世界において知らぬものはおらず、「MAX塗り」などは氏が確率した技術である。TVチャンピオンの「プロモデラー選手権」スーパーバイザーも務め、普及活動にも力を入れる。
クトゥルフ神話TRPGの産みの親ともいえるサンディ・ピーターセン自らが、企画し、キックスターターで4400人が140万ドル(1億5000万円)3500%超の達成で制作されたボードゲーム。4つの旧支配者勢力が世界の覇権を争うというゲーム。日本版の販売元はアークライト社。
㈱アークライトの福本皇祐社長。MAX渡辺氏とは大学同窓で共通の後輩にデーモン小暮閣下がいて、ホビージャパンでも一緒だったので実に37年!?の付き合いだそうです。
具体的な制作期間を伺ったら、3人がかりで4日間。一人でやったら2週間じゃぁ、終わらないと思う。とのことでした。決して短くないと素人は思うのですが(笑)
イギリスのゲーム製作会社ゲームズワークショップが販売するホビー用塗料。指定されたカラーチャートに従って色を塗り重ねていくことで誰にでもリアルなペイントが出来てしまう画期的な塗装システム。
川沿いの窓が全面取られていて、永代橋が真近に見え、本当に贅沢な景色と空間でした。写真参照。
2階は、MAX渡辺氏が経営されているクラフトビールとアメリカ料理が楽しめるEITAI BREWING Cafe&Dinnerがあり、1階はビールの醸造所になっています。 取材班も、取材後、オープンテラスで料理とビールを個人的に楽しませて頂きました!
蜂蜜を原料とする世界最古の酒。クトゥルフ神話にも登場し、肉体と精神を分離させたり、ビヤーキーの召喚使役儀式に使ったりします。
金型を起こして作成したコイン。プリペイド式にコインを購入して支払えるようになっています。たくさん買った方がもちろんお得。